なつかしさと新しさを感じる“実家”のようなカフェ空間
新世界通天閣の“となりのとなり”にオープンしたエンターテイメントカフェ。現代ではいつでもインターネットに繋がっていないと不安になるのが、多くの人の心理です。オフタイムであっても、心は身を置いているその空間にあらず、スマートフォンを通じでネットに繋がっています。友人に連絡を取るのも、モノを購入するのも、レストランを探すのも、まずはスマートフォンをタップすることから行動が始まります。そんな日常で、身体の一部の様なスマートフォンから目を離し、飲食店を利用してもらうには、食欲を満たす以上の体験が重要となります。
「Cafe TONARI no TONARI」は、行きたい飲食店を探す、カスタマージャーニーの終着点の一つとして選ばれるリアル店舗を目指して計画されました。店舗は、1980年代初頭のサーフカフェをイメージした空間。その一部に、70年代に建てられた家の室内が再現されています。ある世代にはなつかしい=実家の様なイメージ、若い世代には見たことのない家のイメージであり、このエリアを「実家」と名付けました。「実家」の家具・備品はほとんどが70年代の製品で、個人売買のアプリや、ネットショップ、雑貨店などで集め、最近まで実際に使用されていたものにこだわりました。更に、「実家」の室内は10年ほど時間が経過した設定とし、エイジング処理を施してリアリティを演出しています。この「実家」は、客席としてだけでなく、Youtubeのスタジオとしても使われる予定です。店内には、その他にもフォトスポットを設け、SNS等で発信されることを狙っています。記事や画像検索から、見てみたい、体験してみたい、ストリーム配信に参加したいなど、エンターテイメント性を持つ、行ってみたくなるカフェです。(東 潤一郎/JA laboratory)
「Cafe TONARI no TONARI」
所在地:大阪市浪速区恵美須東2-7-2
オープン:2022年8月4日
プロデュース:Ko.Ko.Moよしもと 浅田芳三
設計:JA laboratory 東 潤一郎
床面積:130㎡
客席数:44席
Photo:山田誠良
【内外装仕様データ】
床:オーダーエリア/モルタルならし防塵塗装 客席/モルタルならしビニルタイル貼り(FLOOR TILE/サンゲツ) 実家エリア/木軸組み下地合板コンポジションタイル貼り(Pタイル/田島ルーフィング)
壁:LGS組みPBt12.5下地AEP塗装 一部/ビニールクロス貼り(東リ、サンゲツ)
天井:スケルトン LGS組みPBt12.5下地AEP塗装
家具・什器:実家、キッチン/既製品キッチンエイジング処理(S-typeアイボリーツートン/ニッサンハロー) イス、テーブル/アンティーク品 飛沫防止パーテーション/ナラ材フレーム保護材塗布(オスモカラー/オスモ&エーデル)+塩ビ透明波板
その他:ファサード引戸/ナラ材フレーム保護材塗布(キシラデコール/大阪ガスケミカル)+クリアガラスFIX
東 潤一郎/JA laboratory
1967年生まれ。株式会社赤松店鋪研究所(現、野村不動産コマース株式会社)、株式会社フレスコに在籍。赤松店舗研究所では大小商業施設の商環境部の計画・設計を担当。フレスコでは、海外スーパーブランドのローカルアーキテクトとして携わる。2005年、JA laboratoryを設立。A’ Design Award 2018 Bronze、グッドデザイン賞2010、2010JCDデザイン賞など受賞。