数奇の宿 野鶴亭
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歴史と風情ある宿の“余韻”を表現した空間

「野鶴亭」は、800年の歴史ある日当山温泉をはじめ、庭師渾身の苔庭が見事な日本庭園、そして数寄屋造りの家屋など、日々の喧騒を忘れさせてくれる鹿児島随一の老舗旅館である。その中で、愛顧棟と呼ばれる本館(一般客室)の改修計画を担当するにあたり、館内で目にした心が洗われる庭園の景色、地元の幸を使った懐石料理や名泉など、数々の感動の後の“余韻”に浸ることができる場所つくりたいと考えた。まず、客室へ誘うパブリックエリアでは、野鶴亭のアイコンでもある鶴をモチーフにした陶器や水墨アート、地元の伝統工芸でもある大島紬、更には雨の日が最も風情があり美しいと言われる苔庭をイメージしたカーペットのデザインなどが、訪れたゲストの期待感を生む。各居室では、桜島が一望できる窓面を背にベッドを配置し、その手前に畳床のリビングスペースを広く確保することで、コンパクトながらも快適に過ごせるレイアウトを行った。設えにおいても、木天井や違い棚をはじめ、障子、和紙の壁、掛け軸などの数寄屋造りで見られる伝統的な手法に対し、野鶴亭ならではのDNAと“余韻”を、モダンデザインで一つひとつ変換させて空間に落とし込んでいる。その他、2室限定の内風呂付き客室では、大きな檜の浴槽を設け、名泉と鹿児島の景色を贅沢に堪能することができる。

数奇の宿 野鶴亭

所在地:鹿児島県霧島市隼人町東郷1-8
オープン:2023年3月1日
設計:DESIGN STUDIO CROW 藤本泰士 末木なな子 黒瀬俊英 久保田 諒 井上陽登
床面積:510㎡
客室数:9室
Photo:ナカサ&パートナーズ
Designer:

藤本泰士 DESIGN STUDIO CROW ○プロフィールへ