北岡組 本社建築改修

地域の自然や文化を取り込みながら新しい働き方を実践する場所

 

創業80年以上を誇る、建築・土木の企業である北岡組は、「働き方改革」と「時代に先駆けた自然や地域との融合」を目指し地方から日本に次の流れを作り出すべく、本社の大規模建築改修に踏み切った。コンセプトは「吉野川VALLEY」。吉野川は古くから徳島の自然、文化、産業を生み出し人々の暮らしを支える。本社は吉野川と丁度同じ軸線上に東西に延びるため、既存のエントランスから建物を南北に細長く二つに分棟した。具体的には1・2階を吹抜でつなげ社員の対話や交流を促進し、屋根にスリット上のトップライトを東西貫いて設け自然の光や風が注ぎ込む自然環境を作り、さらに建築正面を2つに分割し外に開くことで周辺地域からの人、物、情報が建物に流れ、地域との交流のきっかけを作った。
建築へのアプローチは公園として、地上から建築改修し、5mのカンチレバーとなった庇上まで植栽が立体的に広がり地域に開かれる。入り口では先端技術を使ったコンクリートの3Dプリンターと紅葉がコラボしたオブジェが出迎える。内部に入ると高さ7mを超えるベンジャミンのシンボルツリーがそびえ、外の植栽を力強く屋内に引き込み、まるで外にいるような気持ち良さで働ける。東西に流れる吉野川VALLEYのトップライトからは自然光が注ぎ、昼間は自然光のみで働き、夜は星空のような照明のもとで過ごす。また東西に自然の風がそよぐため、中間期は空調なしの通風のみで十分快適に過ごせる。インテリアは、既存建築のマテリアルと新たな素材を等価で扱い、かつ境界をなくしている。例えば、既存の仕上げを剥ぐことで現れたタイル跡の残る床、赤い錆止め塗装の天井の素材感を融合し、壁はシンプルな合板であわせた。このオフィスではActive Based Workingを実践し、なかでも家族と共に働けることが特徴の一つで、旧来の働き方を脱ぎ、社員・家族・地域を巻き込んだ新たな働き方を目指している。吉野川VALLEYのもと、北岡組の文化と産業の次の流れを関係者とともに生み出すきっかけがここに完成した。(佐藤 航/WATARU ARCHITECTS)

 

 

「北岡組 本社建築改修」
所在地:徳島県美馬市美馬町字妙見67-2
オープン:2024年6月1日
設計:WATARU ARCHITECTS 佐藤 航 藤田 敦
実施設計・監理:細川友也建築設計事務所 細川友也
ランドスケープ設計:en景観設計 中山大輔
機械設備設計:誠設備設計 山田誠二
電気設備設計:Syu 鍋島ゆかり
3Dプリンターオブジェ:Polyuse
照明設計:パナソニック 笹瑞生
技術協力・施工:北岡組
床面積:895㎡(1階470㎡、2階425㎡)
Photo:山本慶太

 

【内外装仕様データ】
床:既存シート床撤去の上コンクリート直床 コンクリート直床の上エポキシ樹脂系塗装
壁:LGS組みPB下地AEP シナ合板CL 有孔ラワン合板単色塗装
天井:天井撤去の上既存赤錆止め塗装 PB撤去の上岩綿吸音板貼り
家具・什器:シナ合板下地CL ラワン合板下地モカ色染色仕上げ 事務用回転チェア ウッドチェア
その他:ダウンライト(スマートアーキ/パナソニック) スポットライト(BeAm Free/パナソニック

 

佐藤 航/WATARU ARCHITECTS
WATARU ARCHITECTS 代表/一級建築士/建築家。1979年、神奈川県生まれ。2003年、東京工業大学大学院卒およびコクヨ入社。2018年、クリエイティブデザイン部部長に着任。WORKからLIFEへ、プロダクトから建築へ、コクヨのデザイン領域拡張のために部を率いて推進。2023年5月にステージを変えて次の変化を生み出すために株式会社WATARU ARCHITECTSを設立。地方から都市、オフィスからホテル・宿泊・商業・住宅、インテリアから建築・ランドスケープ、地方から都市、企画から設計までと、境界を渡って活動。境界をわたることは対岸から物事を常に考えることにつながり、それによって非連続の共感を作り、次の流れを生み出すことを目的に活動。趣味は銭湯めぐり。2児の父。

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