大正時代の特殊喫茶である「カフェー」をコンセプトに、現代カクテルバーの新たな価値を持つ空間デザインをしました。BARの空間デザインで大切な要素はテーマやストーリーを感じれらること、そしてバーテンダーとの親和性です。BARは趣味嗜好の最たるものなので、実際には「何でもあり」と考えても間違いではありません。しかしながら、BARデザインをさせていただく時にいつも考えるのが、インテリアデザイン業界で評価されているお店と、世界のBAR業界で評価されているお店が見事にシンクロしていないこと。バーテンダーはデザイン業界で評価されているBAR空間を知らないことが多いし、デザイナーは本当に評価されている世界のBARをほとんど知りません。それはインフルエンサーである国内外のバーホッパー達のニーズを理解出来ていないことであり、店の規模が大きくなればなるほど繁盛するお店づくりを目指す上で大きなマイナスになります。
「THE BELLWOOD」では、大正時代から現代へと続くカクテル文化の成熟を体験できます。それと同じく空間デザインも大正時代から徐々に改装を重ねてきて今があるような、それぞれの時代のレイヤーを意識しながら改装感を演出しました。オーナーバーテンダーであるAtsushi Suzuki氏は、明確にビジョンを持つブランディングマネージャーであり生粋のクリエイターです。バーテンダーがクリエイターの場合、THE BELLWOODヘいらっしゃるお客様は主に同氏のセンスや世界観を楽しみにきています。ですからインテリアデザイナーはなるべく黒子に徹し、バーテンダーの生き様や内面を最大化するためのデザインを行う必要があります。間違えてもブランディングにそぐわないような、ただ新しくてカッコがいいだけのものをつくってはいけません。それはお客様が「あー、このお店はデザインはインテリアデザイナーに丸投げなんだな」と解釈してしまい、クリエイティブなBARの在り方としてはもっともイケてない状態だからです。それがBARデザインとバーテンダーとの親和性が大切だと考える理由です。
これからの未来は外出することがより特別で贅沢になる時代。外出する目的に選ばれることが、お店の成功でありインテリアデザインの成功である最低条件です。BAR業界が楽しくなり、みんなが出掛けたくなるようなお店づくりを目指しました。(杉山敦彦/THE WHOLEDESIGN)
「THE BELLWOOD」
所在地:東京都渋谷区宇田川町41-31
オープン:2020年6月20日
設計:THE WHOLEDESIGN 杉山敦彦
床面積:50.84㎡
客席数:28席
Photo:ナカサ&パートナーズ
【内外装仕様データ】
床:複層ビニル床タイル貼り
壁:PBt12.5下地オーク古材貼り PBt12.5下地クロス貼りの上エイジング塗装
天井:既存コンクリートスラブの上エイジング塗装
家具:特注家具(キノシタ)