名古屋テレビ塔をホテルにコンバージョンするというプロジェクト。名古屋テレビ塔は1954年に完成し、2005年にタワーとして全国初となる登録有形文化財に指定されました。2011年にデジタル放送化に伴いアナログ放送が終了し、2019年よりこのタワーの再利用と免震装置の設置を含む大改修工事が始まりました。我々は1階の半分の部分にテラス付きカフェ、2階の宴会場、4階のホテルロビー・客室・レストランの設計を担当させていただきました。2017年からこのプロジェクトに参画し、調査と分析、デザインの在り方を模索しました。
60年の歴史を持つ名古屋テレビ塔は、ラジオからテレビ、WEBへとメディアの移り変わりを経ていく中で、電波塔としての存在意義はなくなりました。しかし、一つの役割が終わると共に、名古屋の象徴であるテレビ塔に新たな存在意義を吹き込み、次の時代へ何を発信できるかということを考えました。タワー(電波塔)である特性上、柱は角度のついたトラスで組まれた斜めの材や補強柱などが縦横に入っており、設備のルートなどを踏まえるとかなりの制約がありました。そこで、それらを「隠す」のではなく「魅せる」事が最も良いと判断しました。耐火被覆がなされたトラス材が内部空間に現れることで、この空間がテレビ塔であるということを象徴し、それらを中心として全ての空間をデザインしています。この唯一無二の個性を活かすべく、工事前にはスケルトン状態の空間全体を3Dスキャンし、3Dモデリングを行いながら緻密に空間構成を行い、タワーの構造をいかに「魅せる」かでマテリアルを選定。家具やアートなどのスタイリングについてオーナーや運営会社と協議を重ねました。これからも変化していく未来に、その時代に沿った表現ができるようなキャンバスのようでありながら、変えてはならない後世に残すべき名古屋テレビ塔の魅力を最大限引き出した空間を目指しました。(FHAMS)
「THE TOWER HOTEL NAGOYA」
所在地:愛知県名古屋市中区錦3-6-15先
オープン:2020年9月18日
設計:FHAMS
〈ホテル〉
床面積:1087.86㎡
客室数:13室
〈カフェ FARM&〉
床面積:263.98㎡ (うちテラス126.9㎡)
客室数:カフェ30席 個室1・6席 個室2・8席 テラス32席
〈バンケット・チャペル Lily〉
床面積:バンケット/185.69㎡ チャペル/116.38㎡
客室数:バンケット/104席 チャペル/90席
〈レストラン glycine〉
床面積:91.55㎡
客室数:40席
Photo:ナカサ&パートナーズ
【内外装仕様データ】
〈カフェ FARM&〉
床:モルタル金ゴテ押さえ防塵塗装
壁・天井:EP塗装
家具・什器:カウンター/腰壁・ガルバリウム波板 天板・ステンレス板
〈バンケット〉
床:カーペットタイル貼り
壁:塗装仕上げ(ヘイムペイント)
天井:EP塗装
家具・什器:カウンター/腰壁・大判タイル貼り 天板・メラミン化粧板 吊り棚・真鍮風塗装
〈チャペル〉
床:塩ビタイル貼り
壁:リブパネル貼り 祭壇壁面/擬岩特殊塗装
天井:木目シート貼り
家具・什器:祭壇真鍮オブジェ/パイプ真鍮風塗装
〈ホテル 客室〉
床:ロールカーペット貼り
壁:モルタル左官
天井:EP塗装
家具・什器:ヘッドボード兼腰壁/タモフローリング貼り ナイトテーブル、ミニバー/天板・人工大理石(コーリアン/デュポン) 収納部・タモ突き板 洗面/天板・人工大理石(コーリアン/デュポン) 脚パイプ・黒焼き付け塗装 収納部・タモ突き板
〈ホテル ロビー〉
床・壁:モルタル左官
天井:EP塗装
〈レストラン〉
床:塩ビタイル貼り
壁・天井:EP塗装
家具・什器:カウンター腰壁/タモ突き板 天板/人工大理石(コーリアン/デュポン)