「MASU」は、ベトナムハノイに2020年に出来た日本食レストランです。MASUは日本語の「枡」からとった名前であり、日本の豊かな文化と伝統を象徴するものとしてレストランの名前となっています。また枡が持っている四角い形やディテールからのインスピレーションもレストランにとってはキーとなりました。日本の文化、特に食文化に深く傾倒したオーナーであるPhi Nguyenさんが、2020年5月、緊急事態宣言下におこったSNS上でのコミュニケーションから、我々に仕事を依頼が来てこのプロジェクトが始まりました。そこから、全てリモート会議とメールをはじめとしたメッセージツールによってコミニケーションを深め、ハノイのローカルアーキテクトとともに作り上げました。
私たちは、枡を組み上げるための板を組まれたディテールをヒントにしながら、ハノイにおける町屋と日本における町屋、特に京都の町屋に着想を得て、自由奔放でカオティックな街並みに秩序と与える意味においてファサードに木を組んでいます。二つの建物を一つにする必要があったことも、表層にファサードを作る必要を感じた理由でした。さらに、その木のディテールをインテリアにも反復させていくことで、街とインテリアを繋ぎながら、MASUのコンセプトである日本の文化と伝統への敬意を作り上げました。
Masuは、緊急事態宣言下においてベトナムでも厳しい環境に晒されてはいますが、先日、英ライフスタイルマガジンMonocleにおけるデザインアワードにおいてベストレストランとして選ばれました。食材の多くは日本から輸入されたものであり、日本食の修行を受けたシェフたちによって、コロナ後においては世界中の旅行者やビジネスマンの胃袋を満たすことになるだろうと思っています。また、我々も早く実物が見ることができればと思っています。(芦沢啓治/芦沢啓治建築設計事務所)
「MASU」
所在地:ベトナム ハノイ
オープン:2020年12月
設計:芦沢啓治建築設計事務所 芦沢啓治 入江麻里子 CHAOYEN WU
床面積:240㎡
客席数:74席
Photo:Hoang-Anh Nguyen
【内外装仕様データ】
床:タイル貼り(Semplictia/Vietceramics)
壁:漆喰壁
天井:木ルーバー
家具・什器:テーブル、障子、畳、座椅子(現地特注)
その他:料理道具(日本橋木屋)
芦沢啓治/芦沢啓治建築設計事務所
1996年横浜国立大学建築学科卒業。卒業後、建築家としてのキャリアをスタートし、super robotでの数年間にわたる家具制作を経て、2005年芦沢啓治建築設計事務所設立。2011年東日本大震災を受け、石巻工房を創立。2014年、石巻工房を家具ブランドとして法人化。建築、インテリアだけにとどまらず、家具ブランドとの協業など幅広い分野で活動を行っている。建築、リノベーションから照明・家具デザインに一貫するフィロソフィー「正直なデザイン/Honest Design」から生み出される作品は、国内外から高く評価されている。