京都御所の東側、ティールーム「冬夏(とうか)」は、閑静な住宅街に佇む日本家屋の中にある。今回の計画は、その冬夏のサテライトスペースとなる多目的なラボの計画である。ここでは冬夏で振舞われるお茶の元となる、厳選された様々な茶葉が管理され、その配合のための実験やお茶を通したワークショップなどが行われる。また、冬夏のために必要な打ち合わせスペースや出荷作業のための機能も兼ねるなど、オフィスのような役割も果たす。一方、区画となった空間は約10坪弱のコンパクトなスケルトン空間。そこで私たちは、あえて空間を仕上げたり間仕切りを設けたりすることなく、必要な機能を備えた什器を適宜設置していくシンプルな構成とした。そして中央には、多目的に利用できるラウンド型のテーブルを設置。空間から自ずと導かれた形状は作業動線との関係性を意識している。什器はシナ合板を白で染色した仕上げとし、限られた空間に対して主張の少ないニュートラルな色合いを選んだ。(二俣公一/ケース・リアル)
「冬夏ラボ」
所在地:京都府京都市中京区
オープン:2020年12月
設計:ケース・リアル 二俣公一 古里さなえ
照明計画:LIGHTDESIGN
施工:ナカタニ工務店
床面積:32.4㎡
Photo:水崎浩志
【内外装仕様データ】
床:既存床仕上げ撤去の上防塵クリア塗装
壁:既存仕上げ撤去の上AEP(ライトグレー)
天井:既存天井撤去 躯体現し
収納:シナ合板フラッシュ組み染色仕上げ
二俣公一/ケース・リアル
空間・プロダクトデザイナー。1975年鹿児島生まれ。福岡と東京を拠点に空間設計を軸とするケース・リアル(CASE-REAL)とプロダクトデザインに特化する二俣スタジオ(KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)の両主宰。国内外でインテリア・建築から家具・プロダクトに至るまで多岐に渡るデザインを手がける。近作にDDD HOTEL、イソップ新宿店、Chalet W、キウルベンチ(Artek)など。作品の一部はサンフランシスコ近代美術館の永久所蔵品に選出されているほか、その他受賞多数。2021年より神戸芸術工科大学客員教授。