東急不動産と鹿島建設は、登録有形文化財の旧九段会館(東京・千代田区)を一部保存しながら建て替える「(仮称)九段南一丁目プロジェクト」について、保存棟(旧九段会館部分)の保存・復元工事のプロセスにおける2021年12月の完了を発表した。
プロジェクトのコンセプトは、“水辺に咲くレトロモダン”。旧九段会館の真正性を追求しながら保存・復元し、新築棟ではオフィスを中心とした高度利用を一体的に図る。
保存棟(旧九段会館)の工事は、国の報告書に基づいて実施。工事の過程で発見された創建当時の材料や歴史的価値のある素材は、そのまま保存もしくは一部を残すなどで、建造物の魅力を後世に引き継ぐことを目指した。また、刀剣や陸軍勲章など、軍人会館としての歴史が感じられるデザインは、可能な限り修復し活用する計画とした。中でも階段室では、歴史的価値の高い「霞」という大理石が活用されていたことが分かり、工事の過程で復元することを決定。劣化により復元できない箇所は、他の階段から同じ素材を集めるなどして、可能な限り保存・復元した。他にも、ムラのある緑色が特徴の屋根瓦は、ムラを出すためにあえて古い釜を使用し、織部色を出すために釉薬の配合比率を変えながら40枚以上の試作を繰り返すなど、随所で創建当時の工法・技法を研究し、現代技術とミックスした内装・建具の復元を目指した。
今回、保存棟内には、貸会議室や宴会場をはじめ、会員制シェアオフィス、小規模オフィス、屋上庭園などの多用な施設のほか、創建時の姿を再現した宴会場を設置。照明や装飾品を可能な限り創建時と同様のデザインで復元し、登録有形文化財としての歴史的価値を後世に残すとともに、昭和初期のモダニズムを感じさせる空間づくりを目指した。
一方、保存部分の免震化を図るために「免震レトロフィット工法」を採用。基礎に設置された免震装置により建物と地盤が分離され、地震発生時にも建物の揺れや被害を最小限に食い止めることができるという。
「九段南一丁目プロジェクト」(仮称)
所在地:東京都千代田区九段南一丁目5番1外
プロジェクト全体竣工:2022年7月(予定)
敷地面積:約8765㎡
延べ床面積:約6万7738㎡
規模:地下3階、地上17階建て
施工:鹿島建設