「会津屋」は、東京の春日・後楽園駅前の再開発に伴い、2021年6月末に新店舗をオープンした。1717年(享保2年)創業の会津屋は、1911年より現在店舗を構える文京区に拠点を移し、地域の人たちに愛されてきた老舗の食器店である。新店舗のデザインにあたり、300年続く会津屋の格調を残し、店主の杉田幸一郎氏の朗らかな雰囲気を空間へ反映させたいという思いに至った。これまで営業を続けてきた店舗では、歴史を感じる様々な仕上げが施された多種多様な什器が並んでおり、杉田氏より「長年使用していた什器を引き継いで使い続けたい」というお話を頂いた。
会津屋では様々な作家の作品を扱い、素材も陶磁、ガラス、漆まで多岐に渡る。そんな多種多様な器を受容する空間として、ニュートラルな空間にすることにした。そのため、引き継いで使うことになった什器を杉田氏と弊社デザインスタッフで研磨し、素地を見せることで、意匠や仕上げの異なっていた什器に統一感を与え、新規で製作した什器やテーブルはオーク材で製作して、空間全体のトーンを揃えた。店内の中央に配された大きなテーブルは、お客様がご自宅での器の見え方や使い心地を体感していただくために設えたものであり、器を通じてお客様の暮らしに幸せな時間を提供したいという店主の想いを象徴するものでもある。(小林幹也/小林幹也スタジオ)
「会津屋」
所在地:東京都文京区小石川1-5-1 パークコート文京小石川ザ・タワーPC105
オープン:2021年6月28日
設計:小林幹也スタジオ 小林幹也
床面積:50.05㎡
Photo:太田拓実
【内外装仕様データ】
床:二重床+捨て貼り合板t12下地タイルt9.5貼り(SGR-23M/スワンタイル)
壁・天井:LGS組みPBt12.5下地無機質系不燃壁紙貼り(TH30761/サンゲツ)
家具・什器:テーブル(HORIZON/TAIYOU&C.) チェア(IC1 MAST CHAIR、IC6 MAST COUNTER CHAIR/IMPLEMENTS) 壁面シェルフ /オリジナルユニットシェルフ(IMPLEMENTS) 一部既存什器を研磨し再使用
小林幹也/小林幹也スタジオ
デザイナー。ディレクター。1981年東京都生まれ。2005年武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。インテリアデザイン会社勤務後、MIKIYA KOBAYASHI DESIGN設立。家具、プロダクトからインテリアデザインまで幅広く携わり、国内外のクライアントとともにデザインを提案している。2010年ドイツのiF product design awardにて金賞、ドイツred dot award、,グッドデザイン賞、adc賞など受賞歴多数。2011年にはショップ「TAIYOU no SHITA」をオープン。2012年 株式会社小林幹也スタジオ設立。2018年ライフスタイルブランド「IMPLEMENTS」をオープン。東京とスペイン・バレンシアを拠点に活動。