喧騒から離れた“凪”の空間で、街の魅力を対比的に感じさせる
2020年の夏、「大塚の体温を上げる」をコンセプトに東京の大塚で新しいチャレンジを行っている山口不動産・代表の武藤さんからご連絡をいただいた。当時、山口不動産は大塚駅北口に隣接した敷地で8階建てのビルを建築中だったが、最上階のテナントは時間をかけて良いものを大塚に創り出したいという強い思いがあり、店のオープンはビル竣工から1年以上経過していた。大塚がかつて花街として栄えていた時代を知らない世代にも、これからの大塚を誇れるような店を創ることが武藤さんの希望であった。
駅前のビルで、最上階ガラス張り、目に飛び込んで来るのは力強く主張する看板たち、その環境でこちらも負けじとマッチョにデザインすると、最終的には大塚のエネルギーに飲み込まれていくことになる。街の喧騒から離れ、エレベータで最上階に上がった先に、凪のように静かな空間があれば、相対的に大塚の温度を感じることができると考えた。大塚駅前の街並みや色を遮断するのではなく、現在の大塚の体温を感じながら、露地を歩き茶室へと向かうように、少しずつフィルターをかけつつ、凪が生み出せたのではないかと思う。(白浜 誠/白浜誠建築設計事務所)
「やきとり結火」
所在地:東京都豊島区北大塚2-1-1 ba05 8階
オープン:2021年7月1日
設計:白浜誠建築設計事務所
床面積:155.39㎡
客席数:17席
Photo:ITイメージング 土戸雅裕
【内外装仕様データ】
床:アプローチ/コンクリートビシャン仕上げ ホール/合板捨て貼り下地焼杉調タイル貼り(サンワカンパニー)
壁:アプローチ/PBt12.5下地ロックウール吹付け+AEP 塗装仕上げ(ストーンペイント/ポーターズペイント) ホール/PBt12.5下地漆喰仕上げ(クイックアンドイージー骨材入り/プラネットウォール)
天井:PBt12.5下地ロックウール吹付け+AEP ナラ突き板貼り(リアルパネル/ニッシンイクス)
その他:建具/St製作+アンティークガラス カウンター天板/ナラt30無垢材 付台及びバックカウンター(DEKTON Kelya) イス(Yチェア)
白浜 誠/白浜誠建築設計事務所
建築家。1974年東京生まれ。2000年早稲田大学理工学研究科建築学専攻修士課程修了。同年隈研吾建築都市設計事務所入所、2018年に退所。2012年に白浜誠建築設計事務所を設立。