sukima Osaka

木造平屋の既存の空間を“加装”する

大阪の梅田駅近くに建つ築60年以上の木造平屋を「Hender Scheme」の店舗として改修するプロジェクト。Hender Schemeは、ものづくりの手法の一つとして、例えば見慣れた日用品や名作のスニーカーをモチーフに、レザーシューズの技法をもちいたり、既にあるプロダクトにレザーのパーツを上書きするような、リミックス的な手法を用いているブランド。すでにあるものの視点だけを変えるモノの制作方法は、ジャンルは違えど私たちDDAAも共感する姿勢だ。関西でのフラッグシップショップとなるこのプロジェクトは、彼らがファッションやプロダクトの文脈で行っていることの延長線上にある空間をデザインをしたいと思い、またそれが相応しいのではないかと考えた。DDAAでは、今までのプロジェクトでも、元々あるものをできるだけそのままに、どれだけ新しい視点や価値をつくれるかということをよく考えてきた。今回改修した建物は、とても良い雰囲気の既存の柱と小屋組みの上に、構造用合板による補強がされていた。そこで、Hender Schemeのものづくりのように、新しいレイヤーや視点を上書きすることで、既存の建物はできるだけそのままに、新しい価値をつくることを目指した。まず、ガラス窓やサッシの位置も含めて既存を気にせずに、新たにレイヤーを足すことで店舗に必要な什器を設えることを提案。クライアントは、既存に手を加えずに新たなレイヤーを付け足すこの改修を「加装」と言った。意匠性を含まず取り付けられていた補強材などの「既存」に対し、新たな意匠を施し仕上げる「改装」ではなく、それらを積極的に受け入れ、手を加えずに新たなレイヤーを付け足す「加装」。この加装という考え方によって設計のテーマの一つとなったのが「白」だった。これまでDDAAでは、素材のそのままの色を活かして使うことが多かったが、既存の存在を気にせずに設計しようとすると、プロダクトを見せるための背景をつくる必要がある。そこで、今回は白の使い方を踏み込んで考え、ただ単に背景としての白に塗装するのではなく、見たことのない白の在り方を模索することになった。エポキシ樹脂と白い顔料を混ぜてざらつきを出し、固まるスピードを遅くすることで氷柱状に塗装し、遠くから見ると既存の建物を無視して伸びる白い線が、近づくとニュアンスを持っていて遠景とは違う意味を発見することができるようなデザインとしている。壁に取り付ける什器は白、床に接触している什器は既存の床に合わせてすべてコンクリートとしている。床は研磨してコンクリートの骨材を現して上品な仕上げとすることで、現しの照明や既存を気にしない什器の設えとの調和を図った。また、バックヤードへの出入り口は、工場に使われるビニルカーテンの金物を転用し、レザーで制作したカーテンによって手を使わずに出入りができるようにしている。(DDAA

 

「sukima Osaka」
所在地:大阪府大阪市北区豊崎3-8-17
オープン:2022年10月8日
設計:DDAA 元木大輔 八木佑平
協力:特殊塗装/中村塗装工業 植栽/Yard Works Inc. 照明/BRANCH LIGHTING DESIGN
施工:SET UP
床面積:175.5m²
Photo:toha


元木大輔/DDAA
2010年、DDAA設立。建築、都市、ランドスケープ、インテリア、プロダクト、コンセプトメイクあるいはそれらの多分野にまたがるプロジェクトを建築的な思考を軸に活動。2019年、実験的なデザインとリサーチのための組織としてDDAA LAB設立。2021年、第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館参加。

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