日本的な視点でビジネスホテル空間を再構築
国内外に40棟以上のホテルを運営しているクライアントが展開する、ジャパニーズスタイルのホテル「いやし処ほてる寛楽」の3棟目をデザインしました。「いやし処ほてる寛楽 秋田川反」は、価格帯やサービス形態とも既存の2施設と同様に、いわゆるビジネスホテルにカテゴライズされる施設ですが、これまでのイメージを一新させるべく、寛楽ブランドを再構築しています。特に、フロントから朝食会場までの1Fエリアに関しては、他の同業態とは一線を画す空間にしたいという依頼を受けました。そこで、「和のビジネスホテル」を更に掘り下げたコンセプトワークに取り組み、良い意味でビジネスホテルらしくないビジネスホテルを模索しています。
1階各所のディテールは、繊細で温かみのある日本的でシンプルなものとし、メープル材やオーク材などの北欧テイストをプラスすることで、ホテルという洋の空間を違和感なく和の表現で成り立たせつつ、寛楽らしいくつろぎを生み出しています。また、格子材や木塊には秋田産の杉を、外部の庭には日本の銘石としても知られる男鹿石(おがいし)を採用するなど、地場建材も積極的に使用しました。
客室フロアは、藍と墨をコンセプトにダークトーンでまとめ、柄が特徴的なタイルカーペットを石畳に見立てて敷き込みました。この他、各階のEVホールには、和を感じさせるマテリアルを5種類用いて、印象的なサインパネルを製作、設置しています。(柴澤 淳/サイドデザイン)
「いやし処ほてる寛楽 秋田川反」
所在地;秋田県秋田市南通亀の町4-40
オープン;2023年7月29日
設計;サイドデザイン 柴澤 淳 鈴木優斗
床面積;2244㎡
客室数;94室
【内外装仕様データ】
床;磁器質タイル貼り(ダイナワン、マリスト) タイルカーペット貼り(サンゲツ)
壁;不燃クロス貼り(サンゲツ、シンコール、リリカラ) 樹脂系左官仕上げ(爽土・クライマテリア/アイカ工業) 施釉タイル貼り(名古屋モザイク工業) 不燃和紙貼り(RISE)
天井;不燃クロス貼り(サンゲツ) 不燃和紙貼り(RISE)
その他:家具・什器/メラミン化粧板貼り(アイカ工業) 特注メープル突き板CL仕上げ(フリースタイルクリエーションズ) イス(CRES) 装飾、FRP提灯、スチールサイン、EVホール円形サイン(サーカス)
柴澤 淳/サイドデザイン
インテリアデザイナー。株式会社サイドデザイン代表取締役。1976年宮城県仙台市生まれ。大学で建築を学んだ後、2000年〜日本の古材やアンティーク家具を扱う店舗やCAFEを運営する設計事務所Spera co.に勤務し、飲食店を中心とした商業施設のインテリアデザインに携わる。2008年にサイドデザインパフォーマンスを設立し、2016年、株式会社サイドデザインに改組。2011年GOOD DESIGN賞受賞、BAMBOOAWARD2018入賞。