環境共生型リゾート「MIRU AMAMI」の新宿泊棟エリアとして「Forest Village」14棟が2024年春に完成に向けて着工した。「生物多様性」の基準を高く評価され、世界自然遺産に登録された奄美大島の豊かな森と共生する建築を目指す。
国内外から注目を集めるリゾートホテルグループ、MIRU COLLECTIONが2020年にオープンした「MIRU AMAMI」は、開業以来、地域の自然保全活用への参加や、環境保全のために特定のライセンスを持ったガイドツアーの提供など、奄美大島独自の自然や文化を守りながら発展させていくことに尽力、特別な体験を提供してきた。
新宿泊棟の設計施工は「森と生きる」をフィロソフィーとして掲げ、日本各地の自然立地で環境配慮型建築を手掛けるADXが担当。ADX独自の、3D測量データや土中、水中から採取される生物由来のDNAを調査・分析し、森林地域が持つ多面的な価値を統合的に可視化、評価する「森のカルテ」というアセスメントにより敷地内の地形をデータ化することで最適な配置計画が実現している。
ヴィラの建築・開発は、従来の森やビーチを切り開く大規模な造成や、大量のコンクリートを使った基礎工事、建設現場での大量の廃棄物など自然環境への負荷を伴う開発とは一線を画し、自然環境への負荷を最小化したサステナブルな工法で行われる。高温多湿な亜熱帯海洋性気候、台風・豪雨の常襲や塩害、シロアリの発生など予測される建築物の風化の対策として、株式会社フランウッドと提携し、バイオ素材だけを用いたフラン樹脂加工技術により国産針葉樹をハードウッド化した革新的な資材を外壁材として使用。内装材には断熱効果の大きい炭化コルクを採用した。加えて、害虫もいのちの一つと考え、人間と自然の共存するための棲み分けを社会実践する8thCAL株式会社によるシロアリ対策など、原料・素材の細部まで徹底的にサステナブルな建築に取り組む。
また、多数の固有種や希少野生生物が生息する地区に位置するからこその生態系への十分な配慮も欠かさない。構造物による生息地の分断や日照条件等の微気象の変化がもたらす野生動植物の生息・生育に影響を考慮し「高床式独立基礎工法」を採用。コンクリート使用量も最小化し、土壌への負荷を軽減する。さらに、施工期間が長期化することによる環境負荷にも配慮し、床、壁、天井などの部材はパネル工法を採用。現地でのヴィラ建設期間を従来工法の1/3である約2カ月まで短縮する。
この他、ヴィラ周辺、屋上やテラス等には奄美の在来種を中心とした植物を植栽し、周囲の自然と一体となった森をつくり出す。この森が動植物に新たな生息地を提供することで地域の生物多様性に寄与し「地域の自然を守るだけではなく、もっと豊かにしていく」というビジョンにも通じる。ヴィラの建築は、独特な文化や慣習をもつ奄美大島の伝統的な集落文化に着想を得て、既存の「Sea Village」エリアの13棟とともに、新築する「Forest Village」エリアの14棟をそれぞれの集落として表現。同じリゾート内でも趣の異なる滞在が楽しめる。完成後は、環境配慮の取組が実際に効果を発揮しているかを検証する長期的なモニタリング調査を実施。土中・水中のDNA調査、建築物のライフサイクルでの環境負荷を定量的に評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)調査等により、自然環境への影響を定量化・モニタリングするという。
MIRU AMAMI 新宿泊棟「Forest Village」
所在地:鹿児島県大島郡龍郷町芦徳 800
アクセス:奄美空港から車で20分
敷地面積:3,487.61㎡
延床面積:539.91㎡
総戸数:14棟
構造:木造
設計:ADX
施工:ADX・中村建設
竣工:2024年4月(予定)
https://mirucollection.com/miruamami/ja/miru-amami-home-jpn-2/