国や年代を超えたオリエンタル感のあるタイ料理店
富山県南砺市、福野地域に位置するタイ料理店を計画した。オーナー兼シェフの石田氏は長年、世界中のホテルビジネスの立ち上げに関わっているなかで、タイで出会った世界的料理教育機関であるル・コルドン・ブルー(バンコク)にて、本格的なタイ料理を学ぶ。当初はケータリングのみで友人関係でのビジネスだったが、それが評判を呼び、生まれ故郷である福野へのUターンをきっかけに店舗での起業を決めた。
敷地は、大工さんの元住宅兼作業所。二軒長屋の昔ながらの町並みに立つ建物は、レトロなタイル張りのファサードで、まるでタイの街角にある食堂を連想させるような風格から、外部空間から連続したタイルをデザインのアクセントとしながらも、ちょっと不思議な空間に誘われるようなポップなカラーリングの設えとした。南国らしい、竹の網代の天井材や木彫のペンダント照明を設えつつも、作業所に放置されていた日本の水屋箪笥をキャビネットにリメイクする等、国や年代を超えた化学反応が全体のオリエンタルな空気感の表現に繋がったと感じている。
提供される料理はタイ人でさえも美味しいと唸る程。ここの料理を食べたいとわざわざ福野に訪れる、そんな旅の目的地として育っていくことを期待している。(山川智嗣/CORARE ARTISANS JAPAN)
「SAMRUP(サムラップ)」
所在地:富山県南砺市福野1330-7
オープン:2023年5月5日
設計:CORARE ARTISANS JAPAN 山川智嗣 山川さつき 中嶋麻衣
床面積:34㎡
客席数:10席
Photo:nando 大木 賢
【内外装仕様データ】
床:既存土間コンクリート仕上げ
壁:特殊塗装仕上げ(STONE PAINT COARSE/ポーターズペイント) タイル貼り(RCP-T、RCP=TD/平田タイル)
天井:既存あらわし 網代(J3515/網代商会)
家具・什器:カウンター特殊塗装仕上げ カフェテーブル造作塗装仕上げ 既存水屋箪笥
その他:木彫照明(前川大地/井波木彫工芸館)
山川智嗣/CORARE ARTISANS JAPAN
建築家。コラレアルチザンジャパン代表取締役
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富山県生まれ。明治大学理工学部建築学科卒業。日本一の木彫刻のまち富山県南砺市井波にて「お抱え職人文化を再興する」をコンセプトに、ものづくり職人と新たな価値を創造する新しいカタチのデザイン事務所・コラレアルチザンジャパンを運営。日本初の職人に弟子入りできる宿「Bed and Craft」をプロデュースするなどクリエイティブディレクターとしても活躍している。グッドデザイン賞(岩佐十良審査員特別賞)、東京メトロ銀座線駅デザインコンペティション優秀賞等、受賞歴多数。