メーカーの温かい空気感を感じる“家”のようなオフィス&ショールーム
「エレガントウッド」は、家具の街、福岡県大川市にある特注パネルの会社である。倉庫型の建物が6棟あり、そのうちのオフィス棟のインテリアと、ファクトリーツアーという工場見学で、見学者が訪れた際の外部の見え方を、ローコストかつインパクトのあるものにしたいという依頼であった。
外部空間は、最初に敷地に入た時のファーストインパクトに加え、ファクトリーツアー時に建物を番号順に回っていけるように、建物番号を配置し、入り口の扉を黒に塗り分けることで、6棟の統一感を図っている。オフィス棟のインテリアは、元の倉庫としての建築の存在感を強調しつつ、エレガントウッドの良い意味での家庭内手工業やファミリー経営企業であること、社内外に対しオープンな企業でありたいという思いを汲んで、「開かれたリビングダイニングキッチンLDK」をコンセプトとした。広い倉庫空間を、3つのスキップフロアで分け、各フロアを縦断するように、テーブルにも地面にもなる特注パネルでつくられた大きな縁側カウンターや、7.2mの無垢材のカウンターを設置。さらに大きなダイニングキッチン、10人座れるリビング、グリーンの執務室、ガラスの会議室を配した。
ここで使用されている素材や照明は、エレガントウッドで製作したもののほか、地元企業やネットワークのある企業で製作されたもので、それらのショールームとしても機能している。仲間や取引先の人たちの想いの集積が、この空間をより親しみやすくし、エレガントウッドという会社が持つ温かみを感じさせている。ヨーロッパでは、インテリアに関わる人間なら誰でも知っている家具会社でも、意外にも少人数で家庭的な会社が多い。そんな会社のように、規模の大きさを求めるのではなく、ファミリー企業の良さであるアットホームな空気感で、世界各国から指定オーダーがくる会社になってほしいと思う。世界各国から訪れた施主様やデザイナーが、このオフィスを見て、どういった反応をするかが今から楽しみだ。(増田太史/マスタード)
「Elegant Wood Office & Showroom」
所在地:福岡県大川市向島1512-1
オープン:2023年8月10日
設計:マスタード 増田太史
協力:照明計画/大光電機 安東克幸 ロゴ、グラフィック/cosmos 内田喜基(ディレクション) 和田卓也(デザイン)
床面積:478㎡
Photo:ナカサ&パートナーズ
【内外装仕様データ】
床:モルタルクリア塗装 ウォールナット無垢材フローリング貼り(一部エレガントウッド特注名栗加工) カーペット(東リ)
壁:鉄骨部/AEP 壁面/塗装(ポーターズペイント) 執務室/エレガントウッド特注ブラックチェリーブックマッチ貼り(グラデーション) 化粧室/エレガントウッド特注サテンウォールナット特注デザインパネル
天井:スケルトン部、鉄骨部/AEP 個室/エレガントウッド特注タモチヂミ材クリア
その他:キャビネット、テーブル、収納他(前田建具製作所) カウンター材(高田製材所) 縁側カウンター・エレガントウッド特注厚突板デザインカットパネル 特注ペンダントシェード(t.c.k.w) アート(モメンタムファクトリーorii) オブジェ(ひょうどう工芸) 3Dオブジェプランター(tomorrow) キッチン意匠(東洋ステンレス研磨産業) チェア(丸徳家具) 塗装仕上げ(FCrow) ソファ(ヌースプロジェクツ) ソファファブリック(ニート) 音響(木KION音) 洗面台(大蔵山スタジオ) 絹布紙(t.c.k.w) エントランス特注アクリルドアノブ、ロゴマーク(ひょうどう工芸)
増田太史/マスタード
1981年生まれ。2004年大阪芸術大学卒業。2004年〜株式会社船場、2013年〜株式会社エイジを経て、2016年マスタード株式会社設立。主に、都市部での飲食店を多く手掛ける一方、インドネシアの長期滞在型ホテルや物流倉庫会社の社員食堂を手がけるなど活動の幅を広げている。