内と外、ボリュームと余白、マテリアルが対比し共鳴する空間
ファッションデザイナーの三原康裕が、環境的、社会的責任を多面的な観点から考慮したプロダクトを扱うコンセプトショップ。様々な店舗が立ち並ぶ原宿・神宮前の裏通りにある、ひっそりとした半地下の狭い区画。室内と外部の境界線を弱め、向かいの住宅敷地まで領域が拡張されたかのような店内は、全面LEDのスクリーンやガラス、鏡面、石材の質量の対比が効いたミニマルな空間とした。室内から外部へ突き抜けて飛び出している、2つの石材の上に据えられた鏡面の「直方体」は、公共空間のコンセプチュアルアートのように、特定機能を持たない不合理なボリュームと無駄な余白が、商品が定まらない実験的な店舗に、フレキシビリティと転用の可能性を残している。このブランドらしからぬ“裏面的”に捉えた緊張感のあるデザインに、プロダクトが溶け込むことなく、背景としての「面や線」と「点」となる商品のコントラストが際立っている。鏡面の「直方体」は、石材上面にアンカーボルトで固定し、端部をガラス面にシール接着で固定。ガラスを挟んで、内外で続いているかのようなディテールとした。(久保寛人/インサイドアウト)
「裏|ウラ」
所在地:東京都渋谷区神宮前2-17-6
オープン:2023年10月8日
ディレクション:三原康裕
設計:インサイドアウト 久保寛人 イレーネ・アロンソ
施工:イシマル 勝山裕至 磯田真博 三保谷硝子店 三保谷昌弘
照明計画:HIBIKI 樋引良太
協力:石材/竹林石材店
床面積:47㎡
Photo:KOZO TAKAYAMA
【内外装仕様データ】
床:モルタル金ゴテ仕上げ
壁:PB下地EP ステンレス鏡面貼り 外部パネル貼り(SOLIDO typeF facade/ケイミュー)
天井:PB下地EP 不燃膜光天井(リフォジュール)
その他:照明/Syncaリニア(遠藤照明) 棚下灯(DNライティング) 什器/ステンレス鏡面仕上げ フロートガラス 石材/小松石(竹林石材店) 壁面スクリーン/LEDスクリーン(LED TOKYO)
久保寛人/インサイドアウト
1975年、千葉県船橋市生まれ。1999〜2007年、クライン ダイサム アーキテクツ。2008〜2011年、HIROTOKUBO ARCHITECTURE。2012年、株式会社インサイドアウト 代表取締役。インテリアデザインを軸に、建築・家具・グラフィック・アート等の専門領域の“越境”を意識しながら、複雑化するニーズの中、ミクロとマクロ、おもてとうら、室内と屋外、合理性と不合理など、相反する要素をアート思考、建築思考、様々な視点から共有目標を可視化し、ときには諸条件をひっくり返しながら、インサイドアウト、アウトサイドインの発想の転換を行き来して、プロジェクトに取り組んでいる。
ポートレート撮影/SHITOMICHI