木造の建築的魅力を体感させるシンプルな仕上げ
埼玉県狭山市郊外にあるスーパーマーケットの敷地内に建てられた、アイウエアブランド「JINS」のロードサイド店舗として、緩やかな勾配の切妻屋根を持つ木造の建物を計画しました。南北に2m突き出した軒の下には、エントランスアプローチやテラスを配置。また、それらの前面にはシルバーティーツリーやロシアンオリーブなど、様々な種類の低木、中木を植えています。建物の構造は、建設コストや施工の容易性を考慮し、在来軸組工法を採用しました。什器寸法や通路幅などから割り出された2.3m✕4.2mのグリットを基準とすることで、柱が動線や什器レイアウトを妨げることの無い計画となっています。柱や梁、野地板といった木部の現しに、床のモルタルや壁面塗装のグレーの組み合わせ、そこに差し色として金属部の錆止塗装の赤茶色を加えています。さらに南北に設けた開口部を大きく取ることで、明るく透明感のある空間を実現しました。装飾的な処理ではなく、木質の温かみや無機質なグレー、透明感など建築的な要素を最大限活かすことで、シンプルで居心地の良い商空間となることを目指しました。(TYRANT)
「JINS ベスタ狭山店」
所在地:埼玉県狭山市入間川1159
オープン:2023年8月31日
デザイン監修:TYRANT
構造基本設計:寺戸巽海構造計画工房
実施設計:建築/グラン・クリエイト インテリア/Cloud10
施工:グラン・クリエイト
建築面積:234.12㎡
延床面積:199.80㎡
撮影:高木康広
【内外装仕様データ】
床:モルタル金鏝仕上げの上保護祭塗布(skバリヤーコート/エスケー化研)
壁:木下地+PBt12.5下地AEP
天井:木造躯体現し
家具・什器:メラミン化粧板(K-6302KN/アイカ工業)
松葉邦彦/TYRANT
1979年東京生まれ。東京藝術大学大学院修了後、事務所勤務を経ることなく独立。独学で設計実務を学び、人生で初めて設計した建物が公共の文化施設(旧廣盛酒造再生計画/群馬県中之条町)という異例な経歴を持つ。また、同プロジェクトでは芦原義信賞優秀賞やJCD DESIGN AWARD新人賞など国内外の建築賞を受賞し注目を集める。「浮かせる」「歪ませる」「尖らせる」といった設計手法で新たな価値を生み出す建築の実現を目指しており、その思想・作品は現代アートに通ずるものがある。アートコレクターとして「EUKARYOTE」、「MARUEIDO JAPAN」で自身のコレクションを展示する「MATSUBA COLLECTION」を開催。工学院大学建築学部建築デザイン学科非常勤講師。