〈第1回 渋谷スクランブルスクエア〉
〈第3回 ニュウマン横浜〉
ブランドを象徴する素材で空間を変容させるポップアップストア什器
CRAFSTOは、サステナブルな過程を大切にバッグやウェアを提供するファッションブランドである。同社のブランドイメージを体現するポップアップストアを、年に数回、複数の会場で開催するために、会場の特性に応じて、異なる空間を創出することができるような組み替え可能な什器をデザインした。
高さ800mm、半径約1mの90度円弧の基本ユニットは、その用いよう次第で、空間を多様に変容させる。基本ユニットは、製品に使用されているアップルレザーやリサイクルナイロンを仕上げ材とし、金物の留め具を使用するなど、プロダクトの要素を取り入れることによって、空間・家具・プロダクトの境界を曖昧にした。
ポップアップストア1回目の渋谷スクランブルスクエアでは、2層吹き抜けのアトリウムという会場の特性と、什器の高さ制限が比較的緩いという条件から、ユニットを最大限の高さに組み上げることによって、来場者が大きなバッグの中に入ったかのような体験ができ、会場上部からそれらが巨大なバッグとして認識できるような空間を創出した。
3回目のニュウマン横浜では、島状の会場の位置条件と、会場内の構造物や照明等の備え付け設備の諸条件から、各方向における正面性とシンメトリー性を意識し、また、部分的に本来縦に積み上げるユニットを横置きにすることによって、空間の密度と高さ感覚に変化を与えた。
このように、ブランドの製品の仕上げ材に覆われた基本ユニットは、組み立て→分解→再利用を繰り返しつつ、時と場所によって多様な空間を創出する。(KiKi ARCHi + TAKiBI)
「CRAFSTO POP-UP STORE」
〈第1回〉
所在地:東京都渋谷区渋谷2-24-12 渋谷スクランブルスクエア
オープン:2023年3月8日〜3月28日
設計:KiKi ARCHi + TAKiBI
施工:Roovice AS.CRAFT FURNITURE Fujiwara factory Inc.
床面積:約51㎡
〈第3回〉
所在地:神奈川県横浜市西区南幸1-1-1 ニュウマン横浜
オープン:2023年10月16日〜10月29日
設計:KiKi ARCHi + TAKiBI
施工:Roovice
床面積:約82㎡
Photo:Koji Fujii / TOREAL
【内装外装仕様データ】
床:長尺塩ビシート貼り(エスリュームプレーン/サンゲツ)※第1回のみ
壁:什器基本ユニット/曲げ合板t3下地アップルレザー貼り、リサイクル生地貼り(エコペット/帝人フロンティア)
家具・什器:シナランバーt21下地白ポリt2.5貼り
その他:金物/スチールパイプΦ19.1+スチールプレートt2.3加工真鍮塗装
KiKi ARCHi/関 佳彦 穐吉彩加 柳生田昂仁
「利き酒」「利き茶」といったように、各分野で物事を判断する感覚を意味する「利き〜」。わたしたちの場合、それは「利き(KiKi)デザイン」。建築に限らず、インテリア・ランドスケープからプロダクト・家具に至る大きいものから小さいものまで、 その時々で最適な表現方法で、より新しく心地の良いデザインを提供していきます。主な受賞歴/2016 The QUAD international competition 1st prize、JCD Design Award 2017 Best 100、KUKAN Design Award 2019、iF Design Award 2022、iF Design Award 2024。
TAKiBI/栃内秋彦 佐藤季代
遠い昔、「焚き火」は人々の暮らしに欠かせない営みでした。 炊事や場を暖めるエネルギーの原型として重宝されると同時に人が火を囲むことで、そこにはコミュニティが生まれます。やがて「焚き火」は技術の進化とともに「炉」という設備にかたちを変えて建築を構成する基本要素の一つとも言われるようになりました。 私達はそんな「焚き火」のように、自然やエネルギー、技術、機能とデザインを結びつけることを心がけ、枝木から、かけがえのない価値を生み出すような、ものづくりを提案していきたいと考えています。主な受賞歴/住まいの環境デザイン・アワード2019 優秀賞、第7回日本エコハウス大賞奨励賞、第65回神奈川建築コンクール アピール賞(環境)、日本建築学会関東支部神奈川支所賞(2023年)、iF Design Award 2024。