京都の日常と文化が混在する“新・雑居ビル”
京都でもひときわ人通りの多い、四条河原町の交差点に位置する、髙島屋京都店の隣接地に専門店ゾーンを増床する計画。「新・雑居ビル」というテーマをもとに、地下1階〜地上7階までの各階に異なるデザイナーがアサインされている。DDAAは、地下鉄の阪急線から直結する地下1階と、商店街からの入り口である1階を担当。雑居ビルの「雑」性を考え、新しい商業施設のあり方として、京都の日常でもありつつ、ハレの使い方もできるという意味で、ひとつの価値観に収束するのではない、多様な使い方ができる場所を目指した。
商店街からの出入り口である1階は、グリーンを手掛けるSOLSOと彼らが運営するカフェ(THISIS)NATUREの什器を、人のためだけでなく植物が主役になるようにデザインし、リースラインを拡張して並べることで、境界を見えづらくすることを提案。公園のような雰囲気の中でテナントが自由にお店を出すことができ、共有部にたくさん設置されたベンチが待ち合わせ場所として利用されることを意図した。1階のインテリアやファサードのメインマテリアルとしてテラゾを採用している。砕石の代わりに守屋石や既存階段の手すりなどに使われていた大理石、ビスやボルト、iPhoneを入れることで、ハレとケ、伝統と現代、工芸と人工、古都のような観光地としての京都や、そこに住む人にとっての日常や現代の京都が混在している状態をつくった。
阪急電鉄に直結する地下1階は、食料品店や飲食店が入り、計画途中でコンビニと呼んでいた頻度高く入れ替わるポップアップストアとデパートのハイブリッドがテーマとなったため、コンビニ的なインダストリアルな材料でつくられていながら、デパート的な高級感をもった、多義的な質を目指した。壁と天井に電気めっきしたエキスパンドメタルを仕上げ材に使い、照明や空調、スプリンクラーなどの防災の配管などを全てその内部に配置することで、表面には何もでてこないが、エスカレーターの機構やシャッターボックスなど、通常は壁の中に隠れているものがうっすらと透けて見えるようなデザインとしている。(DDAA)
「京都髙島屋S.C. T8(1階、地下1階)」
所在地:京都市下京区四条通河原町西入真町52
オープン:2023年10月17日
施主:東神開発(1階、地下1階) DAISHIZEN(1階)
設計:DDAA 元木大輔 村井 陸 中村太紀
施工:熊谷組 TANK
床面積:1202.56㎡
Photo:長谷川健太
元木大輔/DDAA
DDAA/DDAA LAB代表。CEKAI所属。Mistletoe Community。シェアスペースhappa運営。東京藝術大学非常勤講師。1981年埼玉県生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業後、スキーマ建築計画勤務。2010年DDAA設立。2019年、コレクティブ・インパクト・コミュニテイーを標榜し、スタートアップの支援を行うMistletoeと共に、実験的なデザインとリサーチのための組織DDAA LABを設立。2021年第17回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展参加。
DDAA
建築、都市計画、ランドスケープ、インテリア、プロダクト、コンセプトメイキングなどの様々な分野で活動している建築・デザイン事務所です。また、DDAA LABという、建築的な思考を軸に、独自のリサーチやプロトタイピングを通して社会性のある実験的なデザインを自主的に行うプラットフォームをもち、ふたつのチームがお互いにフィードバックを繰り返しながら、イノベーティブなアイデアを社会に提供することを目的としています。