ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 Genjyu / Bay

〈幻珠 Genjyu〉

〈Bay〉

福岡の街の記憶を地元のマテリアルや技術で表現したホテルの料飲空間

 

〈幻珠 Genjyu〉
「幻珠 Genjyu」は、1つのレストランでありながら会席、鮨、鉄板焼と3つの異なる日本料理が体感できる複合型スペシャリティーレストランです。伝統的日本建築から引用した空間構成と福岡の伝統工芸を3つの空間の物語へと展開させ、現代的に表現することでこの土地に相応しい空間を生み出しました。レセプションには、日本家屋の玄関の建具を連想させるルーバーと博多織の配列と配色を抽出し、深い紺色に煌びやかな効果を重ね合わせた縦のスクリーンがゲストを迎え入れます。鮨エリアでは、福岡の筑後和傘の傘骨からインスピレーションを得た多面体のパネルで天井や壁一面覆い、天井は錫の箔で傾斜した形状を施しています。寿司カウンターには地元福岡でとれた銀杏の無垢材を採用しています。会席エリアには、福岡のお茶文化を継承し、茶筒をイメージした銅色の円形カウンターと、天井にカッパー色の箔をあしらい空間全体を調和させています。鉄板焼エリアは、福岡の伝統工芸である籃胎漆器の編み込みの技術からインスピレーションを得て、建具には金属で編み込まれたマテリアルを使用し表現することで、現代的に解釈しています。この3つの空間を繋げる廊下は、日本特有の路のシークエンスを感じさせることを意識し、部屋と部屋の間に中庭を計画することで、その目的地までの道のりまでもがゲストの体験の一つとなるように計画しています。道のりにある2つの中庭には高さ 4.2mの玄武岩が配されています。その石壁から、あたかも水が染み出て、庭に水が溜まっているかの様に見立てることで、枯山水を新たな解釈で表現。この土地の記憶とこの土地の伝統的技術を、この土地でしか表現できない福岡のクラフトの豊かさを緻密に解釈しかたちにすることで、このホテルでのゲストの体験を深めることにつなげています。

〈Bay〉
このバーでは、福岡の貿易の歴史をデザインコンセプトとして落とし込みました。そこから現在でも福岡の港を行き交う船の記憶と航海をしてきたボイジャー(旅人)の記憶を抽出し、現代的に解釈することで、この土地でしか語ることができないデザインを導き出しています。貿易で使用されていた船の構造、パーツや曲線美を空間に取り込むことで、まるで実際の船内に乗り込んだかのような体験がゲストを待ちわびています。リフトロビーに到着すると、船を連想させる彫刻と、幅10m、高さ2.7mの鉄の船の外板のアートワークがゲストを迎え入れます。メインバーに到達するとゆらめくガス灯の温かい光りにゲストは出会います。このガス灯の炎が緩やかに揺らぐ様が、波のパターンを象ったカッパー色のメタル天井に反射し、 夕日に染まった玄界灘の水面の光景をメタファーとして感じさせます。メインバーには、ハイカウンター、ハイチェアーと DJブースが備えられています。メインバーに隣接するテラス席からは実際の玄界灘のビューを眺めることができ、バーが玄界灘の風景と溶け込むように一体化しているような空間に。さらに奥へと進むと、船体の構造体からインスピレーションを得て、 骨組みが空間を包み込む、船のプライベートキャビンのようなラウンジエリアが存在します。そして、暖炉の暖かみがゲストにとって居心地の良い空間を創り上げています。このラウンジエリアには2つのプライベートルームがあります。ここに配されている家具は、かつてボイジャー達が異国から持ち帰ってきたアンティークやヨーロッパ式の家具をモチーフとし、ミックス&マッチさせたものです。ビスポークのカーペットは、玄界灘が奏でる水の表情をモチーフに、磯波のシルエットや水をイメージした寒色のトーンで表現。また地球儀や望遠鏡、コンパスからインスピレーションを得た照明器具など、ボイジャーたちのコレクションを点在させています。福岡の貿易の記憶と、その旅路で集積してきたボイジャーの記憶の痕跡を現代的なデザイン言語に置き換えて、この空間に展開させることでゲストにとってこの土地でしか味わえない、唯一無二の体験を提供しています。(STRICKLAND

 

 

「ザ・リッツ・カールトン福岡 幻珠 Genjyu / Bar Bay」
所在地:福岡県福岡市中央区大名2-6-50 福岡大名ガーデンシティ
オープン:2023年6月21日
設計:STRICKLAND
床面積:幻珠/505㎡ Bay/405㎡
客席数:幻珠/62席 Bay/98席
Photo:森田大貴

 

【内外装仕様データ】
〈幻珠 Genjyu〉
床:合板下地木製フローリング貼り モルタル下地御影石貼り
壁:ボード下地(ダイライト/大建工業)天然木練り付け PB下地珪藻土塗壁
天井:PB下地箔シート貼り ボード下地(ダイライト/大建工業)天然木練り付け
〈Bay〉
床:合板下地木製フローリング貼り モルタル下地御影石貼り
壁:ボード下地(ダイライト/大建工業)天然木練り付け PB下地鉄板貼り
天井:特注波型ステンレス貼り ボード下地(ダイライト/大建工業)天然木練り付け

 


赤尾洋平/STRICKLAND
1973年生まれ。武蔵野美術大学空間演出デザイン学科卒業後、空環計画研究所に勤務。2001年にスーパーポテトに入社し、チーフデザイナーとして勤める。2011年に独立、STRICKLANDを設立。日本国内のみならずアジア、オセアニア地域の国際的ラグジュアリーホテルのインテリアデザインを数多く手掛けている。作品はザ・リッツ・カールトン日光の「日本料理byザ・リッツ・カールトン日光」と洋食レストラン「レークハウス」から、HOTEL THE MITSUI KYOTOの温泉スパ設備「サーマスプリングスパ」や客室を含むホテル全体のデザインを担当したハイアットセントリック銀座東京までボーダレスに活動し、多彩な空間体験を創出している。プロジェクトごとの場所性、文化性、歴史性を心体で研究し、とことん考え抜くことで、その場でしか実現できないテイラーメイドのストーリーをインテリアデザインやアートワークとして展開することで、人々のコミュニケーションの場となるインタラクティブな空間づくりを目指している。手掛けたデザインは国際的にも評価され、LUXlife Magazine主催のLeading Designers Awardsにおいて世界の優れたイノベィティブデザイナーに与えられるAward for Excellence in Innovation, A’ Design AwardやInternational Property Awardsなど多数受賞。

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