日本酒の発信の場となる鮨レストラン&バー
上海の閉鎖的なビルの3階に、海外における「日本酒の発信の場」となる新たな鮨屋をつくるプロジェクト。今までにない鮨レストラン&バーとして、中国と日本、ハレとケ、陰と陽など日中のコラボレーション/対比と共存をデザインに落とし込んだ。店内に入るとまず目に入るのが、金箔にくるまれた16mカウンター。その向かいに対になるような錫のカウンターを配置した。金のカウンターでは鮨を、錫のカウンターでは日本酒を楽しめる。調理のメインであるキッチンを営業の場と意識させずに機能させ、単なるカウンターだけではない機能とインパクトを持たせた上で、シンプルにまとまるようデザインした。日本の職人独自の技術による作品をいかに上海に輸出し、家具としての機能を持たせ、かつ作品として完成させられるかが金と錫のカウンターのメインテーマであった。錫のカウンターは、日本の錫作家の作品の特徴である「破れ錫」を再現するため、完成形から逆算して作成、梱包・輸送計画を練り、上海で接着した。金のカウンターは、日本の金箔職人が上海に渡り金箔を貼った。どちらも繊細な技術を活かすため、最善の方法を作家・設計者で協議して施工している。また畳、御簾、障子など日本古来のアイテムをアレンジし、取り入れた。壁一面に風に揺れる葉陰が映る障子のシルエットボックス(光の借景)を配置し、中国の草原の中、月明かりの下で鮨と日本酒を愉しんでいるような空間となっている。(佐藤しげる/DESIGN LABEL KNOT)
「SVINOR SHANGHAI」
所在地:中華人民共和国上海市徐匯区永福路52号
オープン:2024年3月
設計者:DESIGN LABEL KNOT 佐藤しげる
床面積:361.14㎡(バルコニー含む)
客席数:14席
Photo:ナカサ&パートナーズ
【内外装仕様データ】
床:既存コンクリート床に防塵塗装仕上げ
壁:左官仕上げ(ジュラックス青特色/四国化成建材)
天井:吹き付け塗装
什器:鮨カウンター/木下地メラミン化粧板貼り+金箔貼り 日本酒カウンター/木下地+錫板貼り(秦錫工房)
その他:シルエットボックス/障子戸・スプルス材CL仕上げ+特殊シート(ワーロン) 内部・AEP(つや消し白) ファン・LEDランプ取り付け、植栽設置
佐藤しげる/DESIGN LABEL KNOT
1969年東京生まれ。株式会社伯デザイン、株式会社エスパースジャパンを経て、1998年に株式会社グローバルダイニング入社。本社企画部にて店舗の企画・デザイン・管理業務を手がける。主な実績に、ZEST恵比寿店、Stellato、café La Boheme銀座店、glien passage お台場、権八 西麻布店、Decadence du Chocolat 代官山店、g-zone 銀座など。2009年に有限会社KNOT設立。飲食店を中心に、炭火焼きホルモンぐぅ系列店やPASTAVOLA系列店、あっとほぉ〜むカフェ、饗 くろ㐂、中目黒の○(月)などを手がけている。