小学校跡地を幅広い世代の創作意欲を育む場へと再生したプロジェクト
過疎化が進む熊本県山鹿市の山間部において、2017年に廃校となった「千田小学校」を、コワーキングスペースや宿泊など多数の機能を備えた拠点として復活させた地域再生プロジェクト。教育や農業、人材育成、地域活性化推進等、それぞれの領域は異なりつつも、有機的な連携を促すイノベーション拠点とするべく、空間の可能性を追求した。山鹿市の伝統工芸品である「山鹿灯篭(やまがとうろう)」や「来民団扇(くたみうちわ)」 、和傘を用いたディスプレイをはじめ、地産の「肥後杉」や地元ワイナリーの空き瓶をアップサイクルしたアート、地元観光資源の「装飾古墳」を模した壁面グラフィック等、館内各所に山鹿市のルーツを感じられる設えを施した。一方、インテリアやサイン計画には、まちのイメージであり「再生の象徴」ともされる「鹿の角」から着想したモチーフを取り入れた。これらで小学校当時のノスタルジックな雰囲気を残しつつも、ここでしか実現し得ない唯一無二の廃校再生モデルとして、他施設との差別化を図った。子どもから大人まで、誰もが既存の価値観に囚われることなく、新たな気付きと創作意欲を掻き立てられる場となることを期待している。(村上翔哉/スペース)
「YAMAGA BASE」
所在地:熊本県山鹿市鹿央町千田4187
オープン:2024年4月1日(旧山鹿市千田小学校跡、2017年閉校)
設計:スペース
床面積:敷地面積/208493㎡ 延床面積/3092㎡
Photo:JUBILEE
村上翔哉/スペース
1997年生まれ。山口大学工学部感性デザイン工学科卒業後、2020年株式会社スペース入社。空間の力で想いを形にすることを軸に、商業施設内のテナントの設計施工に従事。現在は、デザイナーとして地域活性関連の公共事業、オフィス案件等を手掛ける。これまでに、日本サインデザイン賞(SDA) 、ディスプレイ産業賞(NDF) 、キッズデザイン賞等多数受賞。
スペース
多彩な空間づくりを行う商空間プロデュース企業。主力はショッピングセンター、百貨店、専門店、飲食店など、商業施設の企画、設計、監理及び施工。そのほか、ホテルやオフィス、エンターテインメント施設、展示施設、観光施設、公園など公共施設の企画、設計、監理及び施工も手掛ける。また、内装監理業務やテナント誘致、木工什器の制作なども手掛ける。本社・東京のほか、名古屋、大阪、福岡の主要 4 都市をはじめ、全国各地に事業拠点を持つなど、地域に密着した対応力が特長。