自然素材とアート、庭園が織りなす情緒あるスイートルーム
日本三銘泉で知られる下呂温泉を有する老舗旅館、小川屋。その中でも最上ランクとなる客室「碌間」4室を、上質でありつつも郷土の情緒を新たに継承したスイートルームへと刷新させた。「碌間」の客室タイプは2つに分けて計画。畳和室がメインの本質的な和の奥ゆかしさを感じられる「参」「肆」と、ダイニングをより充実させた和洋スタイルの「弐」「伍」でレイアウトに違いを付け、共通して庭園と景観が最も眺めの良い位置にリビングを間口広く配置し、居室のコアとしている。インテリアデザインにおいては、地元産の飛騨石を始め、左官材、和紙、家具の木材など自然素材を厳選した。また、この地ならではの建築技法である白川郷の合掌造りを現代的に再構築し、意匠天井や建具等の随所のディテールに取り入れた。更には、地元書家による下呂の豊かな自然からインスパイアされた書アートなどの現代美術が加わる事で、滞在ゲストは地域に根付いた伝統的な美意識とジャパニーズモダンを堪能出来る。屋外の禅ガーデンはリビングと隣接し、緻密なバランス配置とライティングで演出された植栽と、新設した東屋内の源泉かけ流しの露天風呂が彫刻の様に凛と佇み、飛騨川や山岳を始めとする風光明媚な自然と見事に調和している。(藤本泰士/DESIGN STUDIO CROW)
「下呂温泉 小川屋 客室【碌間】」
所在地:岐阜県下呂市湯之島570
オープン:2024年12月14日
設計:DESIGN STUDIO CROW 藤本泰士
床面積:503㎡
客室数:4室
Photo:ナカサ&パートナーズ
【内外装仕様データ】
床:畳敷き(大建工業) 磁器質タイル貼り(ダイナワン) オーク材フローリング貼り(ボード)
壁:特殊左官仕上げ(Fujiwara) ヒノキ無垢材板目染色CL 織物クロス貼り(トミタ)
天井:特殊左官仕上げ(Fujiwara) シート貼り(タキロンマテックス) ビニルクロス貼り(ルノン)
家具・什器:人造大理石(アップワード) オーク無垢材 スチール真鍮色 オーク材指定色ウレタン塗装
藤本泰士/DESIGN STUDIO CROW
1983年、愛知県生まれ。10代から三重県に移り工務店に就職。現場作業員として様々な経験を積む。その後、名古屋のデザイン学校を卒業後、上京して2005年から株式会社スーパーポテトに勤務。2009年からハーシュ・ベドナー アソシエイツ(HBA) 東京オフィスに勤務。その他2社のデザイン事務所勤務を経て、2013年にDESIGN STUDIO CROW設立。現在は全国各地のホテルプロジェクトや高級業態の飲食店など、多くの商業空間を中心に手掛けている。